離乳食(補完食)について

●離乳食というと、始める前から「大変!」というイメージを持っていらっしゃる方が多いようです。以下の内容は、私が日頃から話しているものです。食べることは親も子供も毎日のことですから、気軽に楽しみながらやっていってください。 

 

●「補完食」という言葉は聞き慣れないかもしれません。WHO(世界保健機構)が提唱している、科学的根拠に基づいた、赤ちゃんの成長に必要な栄養を補う食事のことです。

日本では、「離乳食」という語が一般的です。

「補完食」は初期、中期、後期、完了期と分けたり、食材や味付けなど細かい制限はなく、母乳やミルクの量も減らす必要がないので、母乳育児、混合栄養、ミルク育児を問わず、考え方として取り入れていくといいと思います。

 

●離乳食(補完食)を始めるのはどうして?

母乳は赤ちゃんにとって完全栄養食ですから、ママが栄養のバランスがとれた食事をしっかり食べて授乳回数を減らさないようにすれば、6ヶ月まで栄養やカロリーは足ります。

赤ちゃんの体重が増え、動きが活発になってくると消費エネルギーが増えてきます。そのため体重が増えにくくなったり、すぐおなかをすかせて不機嫌になってきたりします。

与えられる母乳やミルクの量には限界がありますから、食べ物からカロリーや栄養を補充する必要が出てきます。始めるための準備として、スープや果汁で味ならしをしたり、スプーンの練習は必要はありません。

家族が食べているところを見せて、ジーッと欲しそうに見たり、よだれをたらしたり、口をモグモグした時に赤ちゃん用のスプーンで口にいれてやるとうまくいきます。

 

(参考として)

ママの食事では、特に「鉄分」を意識して摂ることが大切です。鉄分の多いものは、レバー、赤身の肉、魚ではカツオやブリの血合いの部分に多いです。いわし、ひじき、のりなど。

次に「タンパク質」です。肉、魚、卵、豆腐、乳製品など、とりまぜて1日3回の食事で摂りましょう。

 

●離乳食(補完食)の目的は?

いろいろな食べ物をどんどん食べられるようにすることが離乳食の目的ではありません。

アレルギーに気をつけながら、母乳やミルク以外の食べ物の味や食感を体験しながら、飲みこんだり、かんだりして最終的には大人と同じ食べ物を食べられるようにしていくことです。

離乳の完了はだいたい1歳半頃とされています。しかし、これはあくまでも目安です。お兄ちゃん、お姉ちゃんがいれば、同じものを食べたがるので自然と早くなるようです。

 

●離乳食(補完食)のやり方は、大まかに2つあります

 ①大人とは別に裏ごししたり味なしや薄味のものを作る(小分けして冷凍することが多い)

 ②大人の食事(煮物、汁もの)を薄味にし、スプーンでつぶして与える(取り分け法)

 

離乳食の本の通りにやろうと思わず、ママが楽だと思えるやり方がいいのです

『これで安心  離乳食のすすめ方』によれば、「わざわざ作らないこと、そして決して凝らないことが第一です」とあります(P13)。

 その理由として次のことをあげています。

 *わざわざ作ると「食べてくれない」」という気持ちが強くなります

 *「せっかく作ったのに」という気持ちで、無理に食べさせがちです

 

 ●私もまったくこの本に書かれていることに同感です。

 ②の「取り分け法」が楽で、自然で、成長とともに大人の食事の味つけや食品に慣れていきます。

 

この項の下の「みんなのわ8月号.9月号」に、おおまかに知っておいた方がいいと思われることを書きました。参考になさってください。

 

●母乳育児に向いたやり方

母乳育児はミルク育児と比べて、授乳の時刻や間隔、1回に飲む量が一定していません。

1回の哺乳量もミルクほど多くない上に、消化が早いので授乳の回数も多いのが特徴です。

一般の離乳食の本は、ミルク育児や混合栄養を前提として書かれていると思われます。本の通りにやろうとしても、思うようにはいかず大変と感じる方もいらっしゃるのは当然です。

 

離乳食を始めると、授乳回数を減らしていこうと考えがちですが、今まで通りママもしっかり食事をとり、授乳回数を減らさないように心がけることが大事です。

おなかをすかせて離乳食を与えようとしても、母乳を飲みたがって食べるのをいやがることはよくあることです。母乳を飲んだ直後は食べないので、30分とか1時間経ってから、親と一緒に食べるようにした方がやりやすいと思います。

母乳の出が良くて、飲んでいる量が多く体重の増えも順調という場合は、7,8か月頃まで食べたがらないということはよくあります。動きが活発になって、おなかがすくようになると食べるようになるので、気長にゆったりやっていきましょう。

 

本のように、授乳と食事をセットに考えなくてもいいのです

多くの離乳食の本や育児書では「10倍粥」から始めています。

WHO/UNICEFのガイド書の「補完食」では、ゆるい粥はたくさん与えないとカロリーがとれないので、はじめから5倍粥くらいのから与えることを勧めています。

母乳育児の赤ちゃんは、口や舌、あごの動きが発達しているといわれていますから、5倍粥」をすりつぶしたり、うらごしをしなくても食べられます。

ミルク育児の場合は5ヶ月頃から始めることが多いので、(もし心配なら)8倍粥くらいからはじめて、だんだん水分を減らしていけば大丈夫。

赤ちゃんに与える前に、まず自分が歯がないつもりで舌の動きだけで食べてみてください。これならすりつぶさなくても食べられると納得できるはずです。赤ちゃんも、親が食べているのを見ると安心して食べます。

 

(参考として)

粥は「炊き粥」と「入れ粥」の二通りあることを知っておくといいです。

「炊き粥」は米を5倍の水にしばらく浸けて炊きます。米粒はふやけてやわらかく甘みがあっておいしいです。この粥はつぶさずに、そのまま与えられます。

「入れ粥」は炊いたご飯をやらかく煮て作ります。これは、いわゆる「雑炊」のようで、米粒がしっかりしていて甘味もやや少ないように思います。

 

母乳を優先的に与えるようにします

大切なことは、もっと食べると思っても1回量は少なめに与えることです。はじめから1日に2~3回与えてもいいのです。そうすることで、次回の母乳をしっかり飲めるので体重の増えも良く、母乳のトラブルも起こしにくいです。

ちなみに、WHO/UNICEFのガイド書では、「母乳で育っている赤ちゃんは、6~7ヶ月では補完食は1日3回与え、12ヶ月までに1日5回へと増やす」とあります。

 

●初めての食べ物は、親がおいしそうに食べて見せると、赤ちゃんは安心して食べます。

ごく初期は素材の持ち味をいかして味なしでいいですが、なれてきたら味噌汁の具の野菜や豆腐をスプーンでつぶして1口、2口与えて味や食感を体験させてあげます。

前期の頃は、栄養は母乳でとれますから、野菜をすりつぶしてたくさん食べさせる必要はありません。

月齢が進むにつれて、家族の食べているおかずも食べたがるようになります。

8,9ヶ月頃のなると、親が食べておいしいと思う煮物をつぶして与えた方がよく食べます。ちよっと味が濃いかなと思ったら、湯で薄めたり、粥や軟飯と混ぜて与えればいいのです。

赤ちゃんも汗をかくし、食べる量は体に合った量しか食べませんから、塩分の摂り過ぎは心配いりません

調理の原則はよく火を通すこと、単純なこと。和風、洋風を問わず「煮物」がむいています。

1歳を過ぎるまで、夏でも、湯ざましや麦茶などを与えなくても水分不足の心配はありません。

 

●進めていく上での注意

赤ちゃんの腸の消化機能は未熟なので、食べたものが完全に消化されて吸収されるとは限りません。

未消化のたんぱく質によってアレルギー反応を起こすこともあるので、ゆっくり進めていく方が安心です。

口の中にためて飲み込まなかったり、食卓から離れて遊びはじめたら、あっさりやめます。

お粥の水分はだんだん減らしていくと、10ヶ月頃には米と水を1:2にした「軟飯」や「やわらかめのご飯」を食べられるようになります。

10ヶ月頃からは動きが活発になり、おなかがすくので、1口サイズの軟飯の味つきのおにぎりを作っておきます。食事と食事の間の母乳を飲んだ後に与えたり、母乳を吸っていてなかなか離さない時(母乳だけでは満足できないよーというサイン)に1~3個与えると機嫌がよくなります。

こうすることで母乳分泌はだんだん減ってきて、食事の量が増え、卒乳の準備にもなります。

 

卒乳を意識して、母乳の回数を減らそうとせず、おっぱいを欲しがったら気持ちよく与えます。「おっぱいいつやめようか?」とか、やめる話しもしない方がスムーズに卒乳できます。

 

【参考文献】

①『 補完食 母乳で育っている子どもの家庭の食事 WHO/UNICEFのガイド書、2006発行 

『これで安心 離乳食のすすめ方』一般社団法人 日本母乳の会、2017/6/25 A5版定価 800円+税

③『赤ちゃんのための 補完食 入門』相川晴、川口由美子、彩図社、2021/1/25  A5版定価 1400円+税

 

は母乳育児の離乳食の考え方、すすめていく上での具体的アドバイスがつまっていて、ママの気持ちもとても楽になります。わざわざ作らない「取り分け法」が基本なので、母乳育児に限らず、ミルクや混合にもあてはまりまります。私のお薦めです!

③は①をベースにして、一般の離乳食の本や雑誌のやり方も併せて紹介して,具体的に レシピや食品のことも書かれています。この本もお薦めです!

 

 

〈千葉市子育て支援館のパンフレットです〉